13
04月

ともしび(4/13~4/19)

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わたしはあの時、いったい何を失ったのだろう――。


監督:
 アンドレア・パラオロ
出演:
 シャーロット・ランプリング/アンナ
 アンドレ・ウィルム/アンナの夫
 ステファニー・バン・ビーブ/エレーヌ
 シモン・ビショップ/二コラ
 ファトゥ・トラオレ/演技の先生
上映時間:
 93分
日本公開日:
 2019/2/2
製作年:
 2017年
映倫区分:
 G
配給:
 彩プロ

2017年 ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門 主演女優賞(シャーロット・ランプリング)

主婦アンナと家族の背負った罪は、二度と許されないのか?
人生の終盤、誰もに訪れる後悔と失われた希望は、
それでも微かな光を見出だしていく…
 ベルギーの小さな地方都市。老年に差し掛かったアンナ(シャーロット・ランプリング)と夫(アンドレ・ウィルム)は、慎ましやかな暮らしをしていた。小さなダイニングでの、煮込みだけの夕食は、いつものメニューだ。会話こそないが、そこには数十年の時間が培った信頼があるはずだった。しかし、次の日夫は、ある疑惑により警察に出頭し、そのまま収監される。
 しかしアンナの生活にはそれほどの変化はないかに見えた。豪奢な家での家政婦の仕事、そのパート代で通う、演劇クラスや会員制のプールでの余暇など、すべてはルーチンの中で執り行われていく。自分ひとりの食事には、もはや煮込み料理ではなく、簡単な卵料理だけが供されることくらいが、わずかな変化だった。けれどその彼女の生活は、少しづつ、狂いが生じていく。上の階から漏れ出す汚水、ぬぐうことができなくなった天井のシミ、そして響き渡るような音を立てるドアのノックの音…。なんとか日常を取り戻すべく生活を続けるアンナだったが、そこに流れ込むのは、不安と孤独の冷たい雫だった。

やがてそれは見て見ぬふりが出来ないほどに、大きな狂いを生じていくのだった・・・。

大女優ランプリングの実人生が反映されたかのような、感動のドラマ!
 一見、平穏であるかに見えるアンナの日常には、大きな空洞があることに気づかされる。そしてその原因は、どうやら刑務所に収監されている夫にあるらしいことが、徐々に明らかになってくる。しかし微かな仄めかしはあるものの、夫がどんな犯罪に手を染めたのかは、全くと言ってよいほど説明されない。しかし、この冷厳たる家族の秘密によって、アンナ自身は次第に、容赦なく、精神的に追いつめられ、心身ともに果てしなく疲弊していくのだ。 『ともしび』は、老境に入って、ささやかで平穏な日常、家族との結びつきを根こそぎ奪い取られてしまったヒロインが、絶望の淵から生還し、ふたたび“生きなおす”決意を遂げる感動的なドラマである。そこには、40代で鬱病に苛まれ、さらには精神疾患で姉を喪い、二度目の夫とは彼の不倫が原因で離婚するなど、私生活において決して平坦ではなかったシャーロット・ランプリングという大女優の実人生が色濃く反映されているのは間違いなかろう。
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