03
10月

ジャスト6.5 闘いの証(10/3, 7)

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沸騰する熱、逆流する血、ぎらつく眼球、
 命がけで斬り結ぶ魂の果ては地獄か、天国か。

監督:
 サイード・ルスタイ
出演:
 ペイマン・モアディ
 ナビド・モハマドザデー
 ファルハド・アスラニ
 パリナズ・イザディアール
原題:
 Metri Shesh Va Nim
上映時間:
 134分
日本公開日:
 2021年1月16日
製作:
 2019年製作/イラン
映倫区分:
 G
配給:
 オンリー・ハーツ

娯楽性、作家性、社会性
すべてケタ違いのパワーで圧倒する
イラン映画史上最大のヒット作!

街にあふれる薬物依存者の多くはホームレス。薬物撲滅警察特別チームの一員であるサマドは、薬物売人の頂点に立つ大物ナセル・ハグザドを追っている。あの手この手の操作を繰り返したあげく、ついにナセルを彼のペントハウスに追い詰め刑務所に収監する。しかしそれは、ほんの始まりに過ぎなかった・・・。

『ジャスト6.5 闘いの証』はもう凄すぎて
どうやって書くべきか迷ってしまいます。
ずばり、イラン版ドラッグ・ウォー。警察対ドラッグ組織の娯楽大作です。冒頭(タイトル前のシークエンスで早くも度肝を抜かれる)からエンディングまで、ド迫力の横綱級作品。こんなイラン映画、ちょっと見たことない。娯楽大作だけれども、単純に商業映画とも言い難い。作家性がダダ洩れしている。

警察がドラッグ組織を追い詰めて行く物語で、小物ドラッグディーラーから徐々に上の大物へとターゲットを辿っていくプロセスが大胆に、スピーディーに、意外性ふんだんに、壮絶な迫力を伴って描かれていきます。ジャンキーたちの暮らす地域、留置所の中、運び屋の姿、取り調べ、全てが規格外。監督2作目でこんな大作を完成させたとは、まだ30歳のこの監督は末恐ろしいです。

特徴的な甲高い声で指揮を執り、容疑者を激しく尋問する部長刑事役に、アカデミー賞外国語映画賞受賞の『別離』(2011)のペイマン・モアディ(同作でベルリン映画祭俳優賞受賞)。いまやイランで最も有名な俳優のひとりと言っても過言でないかもしれません。

対するギャングの親玉に、ナヴィド・モハマドザデー。彼は近年急激に頭角を現している存在です。僕もここ数年のイラン映画で最高の1本だと思っている「No Date No Signature」(2017)に主演し、罪の意識に苦しむ医師を見事に演じてヴェネチアの主演男優賞を受賞、一躍トップ俳優に躍り出ました。本作ではふてぶてしく苦境を脱しようとするギャング姿が抜群にはまっています。ベルリン映画祭受賞俳優 VS ヴェネチア映画祭受賞俳優。人気と実力を兼ね備えたスター俳優の激突! これはもうたまりません。

東京国際映画祭プログラミング・ディレクター
矢田部吉彦氏

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