15
04月

小さき麦の花(4/15~4/28)

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いつか土に還る

監督:
 リー・ルイジュン
出演:
 ウー・レンリン
 ハイ・チン
 ヤン・クアンルイ
 チャオ・トンピン
 ワン・ツァイラン
 ワン・ツイラン
 シュー・ツァイシャ
 リウ・イーフー
 チャン・チンハイ
 リー・ツォンクオ
 ワン・チールー
原題:
 隠入塵煙 Return to Dust
製作:
 2022年製作/G/中国
上映時間:
 133分
配給:
 マジックアワー、ムヴィオラ

土は人を嫌わない
人も土を嫌わなくていい
土は清らかだ
金持ちにも
貧乏人にも平等だ
1袋の麦を植えれば
10倍や20倍にして
返してくれる

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2011年、中国西北地方の農村。貧しい農民ヨウティエ(ウー・レンリン)と障がいのある内気なクイイン(ハイ・チン)。互いに家族の厄介者だったふたりは、見合い結婚。やがて、互いを慈しみ、力を合わせ、作物を育て、質素な家を作り、慎ましくも日々を生きるのだが、自然の猛威や変わりゆく時代の波にさらされる……。


互いに寄り添い、土に寄り添い、生きる。 
愛という言葉は出てこないけれど、これは永遠の愛〉の物語。

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ベルリン国際映画祭の星取りでは驚異の4.7点(5点が満点)をマークし、金熊賞最有力と絶賛されるも無冠。しかし、中国で公開されると、レビューサイトでも本年度中国映画ベスト1の評価を得てじわじわ広がり、公開後2ヶ月経ってからTikTokが火付け役となり、若い世代を中心に興行収入トップに躍り出る大ヒットを記録。<奇跡の映画>とまで呼ばれたのが、本作『小さき麦の花』である。

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監督は、長編4作目の『僕たちの家に帰ろう』(2014)が日本公開されているリー・ルイジュン。『白鶴に乗って』(2012)がベネチア映画祭オリゾンティ部門、『路過未来』(2017)がカンヌ映画祭ある視点部門、そして本作がベルリン映画祭コンペ部門に選ばれ、世界3大映画祭でキャリアを重ねてきた期待の監督だ。近年、ビー・ガン(『ロング・デイズ・ジャーニー この世の涯てへ』)やグー・シャオガン(『春江水暖〜しゅんこうすいだん』)など中国新世代監督が世界から注目されてきたが、「(本作には)第5世代の名作の痕跡を見ることができる。あるいは、ジャ・ジャンクーの記憶に残る映画と関連付けることもできる。『小さき麦の花』は、これら著名な現代中国の名作との比較に値する」(International Cinephile Society)と評され、新たな名作とも称賛されている。

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ストーリーには貧しい農民として生きることの辛さが描かれている。にも関わらず、観客の胸に残るのは彼らの幸福、彼らの愛の美しさだ。そこにはリー・ルイジュン監督の過去作にもあった、リアリズムの中にふと現れるファンタジックな表現が大きく貢献している。本作でも、3人目の家族ともいうべきロバの仕草、ひよこを孵化させる段ボールの光、そして麦の種で互いの手の甲につくる花のしるしなど、ルイジュン監督らしい描写が素晴らしい。さらには『神水の中のナイフ』、『巡礼の約束』で知られる気鋭のカメラマンのワン・ウェイホアや中国金鶏奨にノミネートされた経験を持つ音響のワン・チャンルイ、イラン出身の作曲家・ピアニストで『風が吹くまま』や『スプリング・フィーバー』なども手掛けるペイマン・ヤズダニアンの音楽も農村の四季の喜びと美しさを伝えている。

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