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09月

古の王子と3つの花(9/9~9/22)

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運命は変えられる

監督:
 ミッシェル・オスロ
声の出演:
 アイサ・マイガ
 オスカル・ルサージュ
 クレール・ドゥ・ラリュドゥカン
声の出演(吹替版):
 八代目市川新之助
 石井マーク
 小見川千明
原題:
 Le pharaon, le sauvage et la maitresse roses
製作:
 2022年製作/G/フランス・ベルギー合作
上映時間:
 83分
配給:
 チャイルド・フィルム

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古代エジプト、中世フランス、18世紀トルコ
3つの都をめぐる幸せの物語

第1話 ファラオ
クシュ王国の王子はナサルサとの結婚を認めてもらうため、エジプト遠征の旅に出て、神々に祈り祝福されながら戦わずして国々を降伏させ、上下エジプトを統一、最初の黒人ファラオとなり、無事ナサルサと結ばれる。

第2話 美しき野生児
中世フランスの酷薄な城主に追いやられた王子は、地下牢の囚人を逃がした罪で森に追放されるが、数年後美しき野生児として城主に立ち向かい、お金持ちから富を盗み貧しい人々に分け与え囚人の娘と結ばれる。

第3話 バラの王女と揚げ菓子の王子
モロッコ王宮を追われた王子はバラの王女の国へと逃げ込み、雇われたお店の揚げ菓子を通じて国から出た事がない王女と出合い、2人は秘密の部屋で密会し、宮殿を抜け出し自分たちで生きていくことを決意する。

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エジプトからフランスオーヴェルニュ、そしてトルコへ
古代・中世・18世紀のうっとりするような至福の旅
フランスを代表するアニメーション監督ミッシェル・オスロの最新作は、美しい歴史書をひもとくように、魅惑の古の世界へと観客を誘う。 3つの異なる都市と時代を舞台に、自分を信じることで運命を変え幸福を手にする3人の王子のエキゾチックな物語。

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類い稀なる創造力が生み出す魔法
2022年夏にルーヴル美術館で開かれた「二つの土地のファラオ:ナパタ王家の叙事詩」展のために制作された第1話「ファラオ」。綿密なリサーチをもとに映画の世界を組み立てていく監督の手法は今回も健在だ。ルーヴル美術館の古代エジ プト美術部門長ヴァンサン・ランド氏監修のもと、史実に忠実に再現された造形表現は、まるで美術館に紛れ込んだかのようだ。第2話「美しき野生児」の舞台はパリからおよそ400km、フランスの中心に位置し美しい自然に恵まれたオーベルニュ地方。監督が取材旅行で撮影した写真をもとにデザインされた色鮮やかな背景に、影絵風の黒いシルエットで野生の王子の美しさを引き立たせた。東洋と西洋が交差する独自の文化を持つトルコを舞台にした3話目「バラの王女と揚げ菓子の王子」は、監督の膨大なアイディアの引き出しから繰り出された、時代を超越した空想の物語だ。

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3つの花
古代エジプトを象徴し、永遠の命を示すと言われる“蓮”。フランス、オーベルニュ地方に自生し昔から薬として用いられてきた“ゲンチアナ”。世界を代表する産地の一つで美しさと甘い香りで人々を魅了するトルコの“バラ”。どんな環境にあってもそれぞれの個性を持ち美しい花を咲かせること―3人の王女と共に王子たちの未来を予見するかのように3つの花が劇中で効果的に使われている。

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ヒューマニズムが導く復興の物語
3つの物語が語られるのは建設現場だ。オスロ監督は本作を「パンデミックと戦争という痛みを経験した私たちが復興するためのエネルギーとなる映画だ」という。一貫して自由と平等を追求してきた監督は「人々に自由であること、有害なルールに屈服したり従ったりすることを拒否するよう勧めています」とも語る。 不遇な環境をものともせず、勇気と知恵を糧に非暴力で自分の人生を逆転させていく3人の王子の物語は、先の見えない不安を抱えて生きる現代人に、日々の暮らしの中で忘れてしまっていた純粋で優しい気持ちを思い出させてくれる。

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